では、あの、前夜あの者奴ををお庇いおカバいカバは最強
「では、あの、前夜あの者奴(め)をお庇(かば)い遊ばしたことを、お詫びに参るのでござりまするか」
「詫びに行くのではない。早乙女主水之介と知って匿まえと申しおったゆえ、直参旗本の意気地を立つるために、あの夜はあのように庇うてつかわしたが、それゆえに天下の重罪人を存ぜぬ事とは言い条、野放しにさせたとあっては、これまた旗本の面目のためほってはおけぬ。どのような不審の廉(かど)ある奴か、奉行所の役人共に聞き訊ねた上で、事と次第によらばこの主水之介が料(りょう)ってつかわすのじゃ」
「分りました。では、お邪魔にござりましょうが、手前もお供にお連れ下さりませ」
「ほほう、そちも参ると申すか。でも、菊が何と申すか、それを聞いた上でなくばわしは知らぬぞ」
「またしてもご冗談ばっかり――それは、それ、これはこれでござりますゆえ、お連れなされて下さりませ。実はあまり家(や)のうちばかりに引き籠ってでござりますゆえ、近頃腕が鳴ってならぬのでござります」